《文字と古書》
文字の歴史を少しひも解くと、紀元前中国の時代まで遡ります。
当時は紙ではなく、竹の册に記していたようです。
あるいは、動物の皮なども用いられていたようです。

古書店が対象として扱うものは、書かれたものなら何でもというほど、広範囲です。
書籍は勿論、一枚の紙切れ、ポスター、葉書、色紙、掛け軸なども扱います。
今は、本屋というと新刊書店を指しますが、書の流通の歴史の中では、古書店の歴史の方が古いのです。

《焚書・発禁》
書には危難の時代がありました。
古くは、秦の始皇帝の焚書が有名です。
近くは、太平洋戦争時の発禁。
為政者にとって都合の悪い書は、かかる憂き目を見てきました。
しかし、にもかかわらず、書は残されてきました。
いま、これらの本を見ると、何が為政者にとって都合が悪かったかを知ることができます。

《版権と古書店》
外国文献を翻訳する際、翻訳権というものがあります。
また書の出版に際しては、書かれて50年未満の場合、出版の許可を著者から得なければなりません。
これを版権と云いますが、版権を持っている出版社が、絶版にしてしまうと、
その本を新刊では読むことができなくなります。
古書店では、このような書も扱います。

《和本》
和本というのは和綴じ本のことですが、西洋式の装丁が用いられる以前には、 すべて和綴じで行われていました。
手書きの他、木版、銅版などがあります。

《特価新本・ゾッキ本》
出版社に書店から返本された本は、在庫として保存されなければ廃棄されますが、
その前に、古書扱いで特別なルートで流れてくる本があります。 これを特価新本或いはゾッキ本と云います。
本の地(底)に赤線を引いて見分けるようになっている場合があります。

《新刊流れ》
書店が返本期限を見落とし買い取りになってしまい、売れぬまま処分に困り、
古書店に持ち込む場合があります。これを新刊流れといいます。
あるいは、訪問販売の営業マンがノルマを科せられて、達成できないとき、 持ち込まれるものもあります。

《古物商》
古物の中で、法的には、古書は特別な扱いを受けています。
買い取り目録の正確な記録は免除されている点です。
これは、長年にわたって古書籍商組合が交渉し続けてきた成果です。
1つには、事務処理が大変であること。
また、1つには、思想調査を拒否することであり、特に後者が重要です。

《蔵出し》
旧家の増改築などの際、蔵に眠っていた保存書籍の引き取り処分を依頼されることがあります。
これを蔵出しといいますが、時折、重要な古文書がでてくることがあります。

《市会》
古書組合では、古書の流通の為に古書の市会というものを開催しています。
組合員だけしか参加できませんが、各古書店の特徴を出すために、この市会が利用されます。
地区によっては、事前に内覧会を行って、一般の方に公開している所もあります。
交換会と呼ぶのが正しいのですが、習慣で市会と呼ぶようになってきています。

《背取り・棚買い》
古書店主が、他の古書店に出向き、その店の古書を買い求めることを背取り、あるいは棚買いと云います。
同業であるため、互いに便宜を図って、日頃は断固値引きに応じない古書店も、この様な時には
一割〜二割の値引きを黙って行う慣習があります。
但し、最近では世知辛くなったのか、あるいは知らないのか、この様な、暗黙の値引きをしない店もあります。
(値引きしないのも野暮、かといって値引きを求めるのも野暮)

背取りは、棚から数冊抜き出す場合で、棚買いは棚単位で買い取る場合と、呼び分けていましたが、
最近はごちゃ混ぜです。

《山買い》
ある古書店倉庫の在庫が一括処分され、他の古書店がまとめて引き取る事があります。
量が膨大なため、一々中身の確認をしないまま、一括幾らと値付けするような場合、これを山買いと云います。
事後は、互いに一切文句を言わない事が前提になります。
蔵出しに際して、中身の確認をしない場合も同じく山買いと云います。
プロは、数個の段ボールを開けて見れば、後は臭いで解るとも云いますが・・・果たして????
山買いできるようになれば、一人前。

《寄せ場/ちりこ買い》
廃品回収業の方の回収品置き場を寄せ場と云いますが、そういう場所には古書として価値あるものが
棄てられてしまっていることが多々あります。
こまめな古書店主はそういう場所に出向いて、探し出したりします。
又、最近は少なくなりましたが、ちり紙交換業者(俗称:ちりこさん)から持ち込まれるものを
買い取る場合もあります。

《寝かし》
新刊出版時に、後々確実に値上がりが期待できる本を、まとめて注文し、在庫ストックにすることがあります。
これを寝かしと云います。出版部数の限られる地方誌などが、この様な対象になります。
出版側は早期完売が出来、古書店側は、将来利益の確保となるので、
持ちつ持たれつの関係でこの様なことをする訳です。

《世代》

古書取扱いの修練には年期がかかります。次のような呼び方がその一端を見せます。
駆け出し…20代
若手…30代〜40代
中堅…50代〜60代
先達…70歳以上
30年かかってやっとヨチヨチ歩きが終わると云ったところでしょうか。

《古書と古本》

まだ新刊でも買えるものを古本と呼び、新刊では買えなくなったものを古書と云います。
「古本屋」と「古書店」という使い分けは、店主がどちらの扱いに比重を置いているかによります。

《書誌》

文献資料の存在を案内・指示する為に作られる文献リストを書誌と云います。
書誌には色々種類があります。網羅的に作成が続けられているのは次の2種です(1次書誌)
・全国書誌…一国の刊行図書をすべて記録することを目的にした書誌です。日本では戦後国立国会図書館が納本制度に基づいて行っています。
・販売書誌…新刊販売ルートにのった図書をすべて収録しようとする書誌です。日本では1930年以降「出版年鑑」として刊行されてきました。